働き方は連続的で、もっとグラデーションであるべき。ー小谷草志(TEMKIT代表取締役)

東京と地方にそれぞれ拠点を持つ働き方が、にわかに注目されている。

今回、インタビューをしたのは、小谷草志さん。小谷さんは鳥取と東京に拠点を持つ「二拠点生活」の実践者だ。

インタビューで紐解かれたのは「二拠点生活」や「地方移住」が抱える働き方の課題や問題点。そして、人生において働き方、生き方を自分で選択することへの意義。

「働き方はグラデーションであるべき」と語る小谷さんの、地方と東京で働くことへの想いを伺った。



<Profile>

小谷草志

1988年生まれ。兵庫県出身。TEAMKIT代表取締役。マーケティングの企画やプランニングや、新規事業やプロジェクトのコンサルティングを行っている。鳥取県の委託事業をきっかけに、鳥取と東京の二拠点生活を始める。鳥取と東京との二拠点生活を始めて五年目。鳥取県では、空き家を活用した地域づくりや、地方創生のプロモーションなどに携わってる。


二拠点生活が地方移住へのはじめの一歩になって、自分の好きなところで暮らせて、好きな仕事もする、みたいな選択肢は、人生においてあるに越したことはないですよね。


ー小谷さんはフリーランスになってから鳥取と東京との二拠点生活を始めるようになったそうですね。鳥取と東京は距離もあると思いますが、その距離感にためらいみたいなものはなかったのでしょうか?

そこまで遠いイメージはなかったんです。二拠点生活を始めた当初はすでに個人事業主だったので、自分で使える時間は自由でしたし、距離がハードルになる、という感じはなかったですね。「とりあえず二拠点生活を五年続けてみよう」みたいに、最初からトライする期間を定めてはいませんでしたし、鳥取に面白そうなプロジェクトがあったから、結果的に二拠点生活にならざるを得なかった、という感じですね。

鳥取では空き家の利活用や、移住促進の事業をしているので、現地でのオフィス兼滞在場所として、空き家を活用しています。


ー二拠点生活をはじめるにあたって不安はありましたか?

不安はあまりなかったですね。というのも、ずっと東京に住む、ずっと鳥取に住む、っていうのはイメージできなかったんですよ。僕は飽き性な性格なので(笑)だから最初から難しいかもな、っていうのは考えていませんでした。

鳥取と東京を往復する交通手段も夜行バスから新幹線になったり、仕事のフェーズに合わせて最適化していきました。滞在するサイクルもそのフェーズによって変動しています。今は月に1回、鳥取へ行って現地で3、4日滞在する、というサイクルですね。


ーもともと学生時代や会社員時代に、二拠点生活への想いを抱いていたのでしょうか?

ありませんでした。自分が二拠点生活をはじめてみて、結果的にそのライフスタイルが自分に合っていたんですよね。今は二拠点だけではなく、三拠点や四拠点、もっといくつもの拠点で生活をして、そこに仕事も付随していけばいいなって思っています。


ー小谷さん自身は、複数拠点での生活のどういったところに魅力を感じていますか?

ギャップが面白いな、と思って。東京都と鳥取県って、人口最大都市と最小県なんです。僕は東京でマーケティングリサーチの仕事を受けているんですけど、東京でビジネスの最前線の話を聞いた後に、次の日に鳥取で空き家の清掃をやっていたりとか(笑)逆に「シェアリングエコノミー」って東京だと最前線のビシネスって感じなんですけど、鳥取だと自分の家の野菜をご近所同士で自然とシェアしたりとか、乗り物を相乗りしたりとかって、至って普通なことなんですよね。逆に鳥取の最先端が東京では普通なことだったり、そういうギャップを肌で感じれるのがすごく面白かったんです。

二拠点生活を始めて、しばらくしてから「あ、これは続けた方がいいな」と思うようになったんです。というのも、先ほど述べたギャップが学びにも繋がって、東京にも鳥取にもいいものを届けられる。外の視点って意外と大事で、凝り固まった価値観の中で物事を完結してしまうところを、外部の視点を持ち込むことで変えられるものもあるなって思って。僕のように五年くらい二拠点生活をしている人ってそこまで多くないので、その外部の視点を届けることが僕の役割だと思っていますね。


ーUターンやIターンの活性化などで地方移住が注目されていますよね。

そもそも「こういうライフスタイルをやってみたい!」と思った時に、プライベートとワークをざっくりと切り分けて考えると、ワークはプライベートに比べて圧倒的に不自由なんですよね。僕が二拠点生活を実践できているのは、個人事業主っていうワークの部分を自分でコントロールできるからですし、会社員の方だともっと実現度は下がる。やっぱりワークの時間を自分の手でコントロールできるか、っていうのは二拠点生活をする上で大きい部分だと思います。今、僕は鳥取で移住のプロジェクトも手伝っているんですけど、地方移住をするってほぼ第二の人生を歩むのと同意義になっているんですよね。鳥取に移住してくる人は、東京で積み上げたキャリアも仕事も全部捨てて、心機一転、ゼロの状態になって鳥取に来る。僕自身、それってすごく微妙だな、って思っているところもあって。リモートワークができたら、もしかしたらこの問題は解決できるのかもしれないのに、なかなかそれは実現できていない。どうしてもワークが固定化してしまっているのが現状なんです。移住プロジェクトの中にはお試し住宅のような試みもありますけど、20~40代の会社員が1ヶ月以上、地方でお試し移住することは普通に考えたらできないですよね。だから人生の一大決心で移住してくる人が大多数になってしまう。


ー人生の一大決心というよりは、もっと気軽に二拠点生活を始められるのが理想的だ、と。

そうです。自分のライフスタイルに合った働き方をどう選べるのか、どう作れるのか、っていう話だと思いますし、その可能性ってもっとあってもいいんじゃないかな、って思うんです。例えば東京で馬車馬のように働いていて、メンタルもフィジカルもボロボロで、「私の人生ってこんなんだったっけ・・・?」って思っている人が仮にいるとすると、それってめちゃくちゃもったいないことだなって。それってその人の人生において大きな損失だと思うし、二拠点生活が地方移住へのはじめの一歩になって、そのあとは自分の好きなところで暮らせて、好きな仕事もするみたいな選択肢は、人生においてあるに越したことはないですよね。


ー人生のターニングポイントっていう意味でも、人生に合わせた働き方が必要になってくるということですね。

それこそ、子育てとか、結婚を機に、親の介護、とか、人生ってライフステージが変化する時に決断があるじゃないですか。でも働き方って連続的、もっとグラデーションであるべきなんですよね。二拠点生活もそのグラデーションのひとつでしかないんです。今って、ゼロか1か、東京か鳥取か、フリーランスか会社員か、みたいな話になっている。でもそれってしんどくない?って思うし、もっと曖昧なものでいいと思うんです。

働き方はグラデーションであるべきというのも、二拠点生活をはじめてから生まれてきた考え方なんです。働き方がゼロか1かになっちゃうと、僕自身、すごい窮屈に感じますし、例えば社外の人間か社内の人間か、鳥取の人なのか東京の人なのか、とか、人と人との関係は、自分が東京人だろうが鳥取人だろうが関係ないですよね。そこがもっと普通にならないと、自分のやりたいことに携わろうという行動自体が「普通」になっていかなんじゃないかと。


まずは気になる地域のプロジェクトが掲載されているサービスをのぞいてみて、こういう関わり方ができるな、っていうのを考えてみる。


ー今、二拠点生活をしてみたいな、って少しでも思っている人はまずどこからはじめてみるのがいいのでしょうか?

いきなり移住先を見つけるのはハードルが高いと思うので、いかにそのハードルを上げすぎないようにするのか、っていうのが一歩目だと思います。複業でも地域のプロジェクトや企業に参加できるWebサービスもありますし、僕が代表を務めるTEAMKITを使ってもらってもいい。まずは気になる地域のプロジェクトが掲載されているサービスをのぞいてみて、こういう関わり方ができるな、っていうのを考えてみる。会社員の人は自分のスキルをシェアできるサービスだったり、そこから調べるのもいいと思います。


ーSNSが最盛期を迎える今、地域との距離はそこまで遠くないのかもしれませんね。

そうですね。地域で気になる人を見つけたら「こういう仕事をしているので、プロジェクトを手伝わせてもらえませんか?」ってFecebookでメッセージを送ってみるのもひとつの手だと思います。まずはハードルを上げずにアクションできることを自分で探してみてはいかがでしょうか。

ニソクノワラジ

『すべての"生きづらい"を、生きる力に変えるWebメディア』 ニソクノワラジは、様々な"生きづらさ"に悩む人々に、前向きな力を与えるウェブメディアです。今日の複雑化した社会では、仕事と私生活の両立、自分らしさの探求など、多くの人が様々な課題に直面しています。このメディアは、そうした"生きづらさ"と向き合い、それを"生きる力"に変えていくことを目指しています。

0コメント

  • 1000 / 1000