ニソクノワラジのスピンオフ企画「”幸福”について見つめなおす」をコンセプトにした『幸福論ノオト』がスタートしました。
様々な分野で活躍する方々に”幸福”についてのインタビューを行い、生きづらさを抱える方に勇気を与えるメディアを目指します。
インタビュー第一弾は、2019年に「ずっと仲良くいられるふたりを目指すメディア」Webメディア『すきだよ』を立ち上げ、編集長として、SNSやnoteのマガジンなどでパートナーシップについて日々発信をされているムラオユイさん。
いつもパートナーとの微笑ましい日常を、あたたかい目線と言葉で綴っているムラオさんですが、実は、結婚以前は「婚活病み期」があったらしく・・・。
恋愛や結婚、そしてパートナーシップについて、様々な「多様性」が溢れている現代。しかし、選択肢が多いからこそ、自分が納得して選び取ることが大切だ、とムラオさんは言います。そして、「婚活病み期」で自分と向き合ったからこそ、芽生えた”幸福”に対する考え方。
今回はムラオさんの結婚以前のお話もお伺いしつつ、ムラオさんと「結婚と幸福観」ついて一緒に見つめ直しました。
<Profile>
ムラオユイ
1987年東京都生まれ。
大学卒業後、人材派遣会社に入社してキャリア支援に関わる。社会人10年目になるころ、「会社を離れたら何ができるのか、何をやりたいのか」にモヤモヤしはじめ、ライティングスクール通学&卒業。ライターのアシスタントから複業をスタートさせ、2019年12月にはパートナーシップをテーマにしたWebメディア「すきだよ」の立ち上げ・編集長を務める。
現在は会社員兼ライター・編集として複数メディアに携わり、自分らしい人生の選択肢やパートナーシップのかたちを見つけるヒントを届けたいと活動中。
ムラオさんの人生幸福度グラフ
”人の目”や”世の中の価値観”を気にして、結婚することが目的化してしまった「婚活病み期」
ームラオさんはツイッターやwebメディア『すきだよ』で、ご自身とパートナーの日常を日々発信されてますよね。でも、ご結婚される前は「婚活病み期」があったとか・・・。
そうなんです(笑)私、20代後半から30歳の手前までずっといいご縁がなくて。でも、もともと恋愛体質でもないし、仕事にもやりがいを感じていましたし、自分なりに人生を楽しんでたんです。でも、20代後半になるにつれ、周りから「結婚できない女」ってレッテルを貼られているように思えるできごとが増えてきたんです。勝手に「行き遅れの可哀想な人」だと思われたり、「早くいい人見つけなよ」って言われたり、結婚してないと人からそんな見られ方をするんだ、ってショックだったんですよね。それで、「結婚していない私っておかしいのかな?」「ダメな人なのかな?」って思い込んじゃって。それが、私の「婚活病み期」が始まりでしたね。
ムラオさんが編集長を務めるWebメディア『すきだよ』
ー女性は特にそういった目に晒されるかもしれませんね。周りの目がネガティブな感情にもつながると思います。
そうですね。それこそ、私の「婚活病み期」は前期と後期に分かれていて、前期は人から色々と言われてモヤモヤしていた時期。後期は”人の目”や”世の中の価値観”を気にして、結婚することが目的化してしまった時期なんです。
ー目的化、というと?
人の目を気にするあまり「とにかく結婚さえすれば私は幸せになれるんだ!」って思い込んでいたんです。周りから「結婚をしていない可哀想な人」って思われたくないし、自分自身も幸せになりたい。そのために「早く結婚しなきゃ!とにかく結婚しなきゃ!」って突っ走ってしまったんです(笑)
ー”結婚して幸せになること”ではなくて、”結婚すること”自体が目的になってしまったんですね。
そうですそうです。結婚が目的になってしまうと、どんな男性と会っても、その人自身にちゃんと向き合えないんですよね。今思えば、デートをしている時に無意識に相手の男性を”査定”をしてしまっていたなと思います・・・。「この人のことちゃんと好きになれるかな」とか「この人は私を幸せにしてくれるのかな」とか。そんなこと考えながらデートしてても全然楽しくない。査定している私の視線は相手にも伝わってしまうもので、「良いな」と思った人ほど私の「結婚したい」圧に引いて距離を置かれてしまうし、相手が好意を持ってくれていても、良い人だけど私の結婚相手ではないかも、ってよく知ろうとする前に見切りをつけたりして。ねじれ現象が起こっていましたね。でも、当時はなんでうまくいかないのか自分ではわからなかったんです。「私ってもしかして人のことを好きになれない人間なのかも」って悩んじゃったりもして。
ーそれは気持ちも病んでしまいますよね。そもそも、当時のムラオさんにとって、幸せな結婚とはどういったものだったのでしょうか?
「相手に幸せにしてもらおう」っていう受け身な気持ちでしたね。結婚というステータスを手に入れることによって幸福になれる、と思っていました。でも、それって実態がないことですよね。結婚の意味づけは人によりますし、したからって必ず幸せになれるとは限らない。全ては自分次第。でも、当時の私にはそれがわからなかったんです。ステータスさえ手に入れれば万事解決だって思っていました。
私自身、高校生くらいから、「家庭を支える妻」は自分はそぐわないな、ってなんとなく思っていて。いざ社会人になったら、仕事は仕事で楽しいし、私の自己表現は社会に出て働くことだって思っていたので、いわゆる”家庭的な奥さん”という固定観念に対してコンプレックスを感じてしまうこともありました。
ー世の中的にはいまだ「家庭的でいい奥さん」という理想像を求める空気がありますよね。その世の中の価値観とのズレがムラオさんを苦しめていたんでしょうか?
それはあるかもしれないですね。自分は自分のことを一番よく理解していますから、自分自身が”家庭的な奥さん”からかけ離れた人間だってことはよくわかっています。でも、結構、男性から持たれる第一印象が「料理ができそう」だったり「ふわふわしてて女の子っぽくて優しそう」だったり、自分本来の実像とはちょっと違っていたんです。その差異に苦しんでいたかもしれません。
ーそんな「婚活病み期」をどうやって抜け出したんですか?
ある時、「私、なんでこんなに消耗してるんだろう」って思って、自分の婚活を振り返ってみたんですね。そしたら、「私のことを好きになってくれるかな」って思考に私自身が囚われすぎていて、出会った男性との会話を心から楽しんだり、将来を共に歩むかもしれない相手として意思疎通ができていなかったな、ってことに気がついたんです。それで「私にとって”幸せ”とは一体なんなんだ?」ってことを改めて見つめ直してみたんです。その結果、私はいわゆる”家庭的な奥さん”に収まるのではなく、自分の人生を自分でちゃんと歩んでいきたいんだな、って自分自身の本音に気がついたんです。それで、「私の人生にパートナーの有無は大した問題じゃないんじゃないか」って思って。
ーそんな境地にまで達したんですね。
はい。そこまで考えが行き着きましたね。結局、私が結婚したいと思っているのは、自分の心からの願望じゃなくて、「結婚できない可哀想な人」って思われたくない。つまり、プライドや世間体に対する負い目や、思い込みだったんじゃないか、って。それだったら、人の目なんか気にせず人生を生きていけばいいんだ。無理に結婚に将来の照準を合わせて、やみくもに相手を探すよりも、私が楽しいって思ったことを、人の目なんか気にせずにやればいいんだって。その気持ちに気がついたら、ふっと心が軽くなって、それで、「もう婚活やめよ」ってなりました。
ーでは、「ひとりでもいいから、自分で自分の人生を歩もう」という決意までして、なぜ今のパートナーとの結婚を選んだのでしょうか?
実は今のパートナーは「婚活もういいや!」ってなって、最後に出会った人で(笑)この人でダメだったら婚活休止!って決めていて、それで最後の最後にあったのが彼なんです。
ーええ!そうなんですか!!今のパートナーとの結婚の決め手はなんだったんですか?
自然体で一緒にいることを楽しめたのが大きいですね。今まではデートする相手のことを減点方式で見てしまっていたんですけど、「婚活やめた」という気持ちになったことで「この人のことを将来の結婚相手として見極めるぞ!」っていう自分の中の婚活フィルターがなくなったんです。それで、今のパートナーと何も期待せずにデートに行ったら、私自身、自然体で会話を楽しめて、その後のメッセージのやりとりもなんの障壁もなく続けることができたんです。相手と接するのに無理してる感がなかったのは、結婚の大きな決め手だったと思いますね。
『すきだよ』ではあくまでも多様性は示すけど、答えを自分の中にあるんだよ、ってことを伝えたい。
ームラオさんは、なぜご自身でパートナーシップを発信するようになったんでしょうか?
Webメディア「すきだよ」やSNSでパートナーシップについて発信していくことは、自分とパートナーの幸せについての探求でもあるんです。私は基本的に、パートナーと相思相愛であること自体が奇跡だと思っていて。自分の好きな人が自分のことも好きでいてくれるって、すごい確率じゃないですか?相思相愛って”当たり前じゃない状態”なんですよね。だから、その”当たり前じゃない状態”が続いてくれているのが、私にとってもすごく嬉しいことなんです。
私がWebメディアやSNSでパートナーシップについて発信するようになったのは、その”当たり前じゃない状態”を自分でずっと自覚していたいからなんです。
ー相思相愛だったカップルも、長い時間一緒にいることで、すれ違ってしまったり、マンネリになってしまったりしますよね。
お互いに心が離れてしまう原因は、長い時間一緒にいることで、「相手に自分の気持ちを言わなくてもわかるはず」「察してほしい」という気持ちが生まれるのが一因だと思います。人の気持ちって、どんどん変化していくものですよね。だけど、定期的にその気持ちの答え合わせをしなくなるから、お互いの気持ちにすれ違いが起こってしまう。パートナーとの関係って、”ふたりだけの関係”ですよね。お互いの価値観のすり合わせを定期的にしていかないと「相手は〇〇してくれるはずだ」って思い込みにいつのまに囚われてしまうし、その思い込みを自覚しにくいんです。
『すきだよ』で、他のカップルの事例とかコミュニケーションの方法とかを聞いてみると、みんなまったく違う方法を取っていて驚くことも多いんです。他人の事例を聞いてみると、自分の中の先入観に気がつくこともできるんです。パートナーシップに「こうあるべき」という決まった正解はなくて、人それぞれのかたちでやっていばいいんだって。
ーなるほど。
逆に他の人の事例を知っていなかったら、「婚活病み期」の頃のように人の目を気にしていたかもしれませんね。「よそのカップルは仲良さそうなのに~!」とか「この年齢だったら子どものことを考えるはずなのに一言も話し合ってない!どうしよう」とか、他のカップルと比べて、あそこが足りない、ここが足りない、って不安になっていたと思います。
だからこそ、Webメディア『すきだよ』を通して、それぞれのカップルのあるべき姿っていうのを問い直したい気持ちもあるし、ゆくゆくは過去の私みたいに「結婚しなきゃ」に苦しんでいる人とか、”世の中の価値観”に縛られている人を解放したいですね。
ー『すきだよ』で発信していることは世の中には色々な人がいるんだよ、って価値観の提案でもありますよね。それが苦しんでいる人への救いにもなると思います。
そうですね。それと、今、メディアの運営や、記事を書く上で気をつけていることは、「押しつけにしない」ってことです。取り上げたカップルがどんなコミュニケーションを経て、今の決断に至ったのか、そのプロセスを大切にしたいんです。最初から結論ありきにしちゃうと、それはそれで新たな悲劇の始まりですし(笑)
『すきだよ』ではあくまでも多様性は示すけど、答え自分の中にあるんだよ、ってことを伝えたいですね。そのために、自分の思い込みや常識をきちんと認識して、フラットにしていこう。そうすると、自然と選択肢が増えるよ、ってメッセージを込めています。
ームラオさん自身、これからの社会で”幸福”の形はどのように変化していくと思いますか?
「こうしておけば人生安泰、間違いない」というような絶対解がなくなって、“みんなと一緒が安心”という価値観に違和感を持つ場面が増えてくると思います。今は、昭和の時代よりは結婚を自由にできる時代ですよね。でも、”世の中の価値観”だけが昭和の時代からアップデートされていないのかなって思うんです。若い世代と話していても、「結婚は経済的に安定しないとできない」とか、「好きな相手とは価値観が完璧に合っていないとダメ」とか、相手と違うってことを悪いことだって思い込んでいる子も多いんですよね。”みんな一緒が安心”で、自分の基準で人生を選べる子が少ないような気がしています。
ー”みんなと一緒の人生がいい”って価値観はいまだに根強いですよね。
私が「“みんな”と同じように結婚すれば安泰」と思い込んでしまっていたように、世の中にはいろいろな選択肢が増えているのに、自分自身の選択に自信が持てず不安になる人も多いんじゃないかと思うんです。だから、「こうあるべき」に捉われない選択肢が発見できること、それを自分が納得して選び取ること、自分の人生を自分の足で歩いているなと実感できることがこれからの幸せのキーワードになるんじゃないかな、と思います。
ー自分自身の人生を自分の足で歩いているな、と実感するために必要なことはどんなことでしょう?
やっぱり「世の中には人それぞれの自分らしい選択をしている人がたくさんいるんだよ」って事例を知って、そんな人生の選択肢もあるんだ!って自分自身で発見していくことが大切ですね。選択の幅が増えれば、「自分はどうしたいんだっけ?」って壁にぶつかった時に、考える材料になります。たとえ悩んで壁にぶつかったとしても、自分で選択し決断して、壁を乗り越えれば、それが自分の人生を自分の足で歩いている、という実感につながると思うんです。
『すきだよ』でその壁を乗り越える”選択肢”を見つけてもらえるよう、私はこれからも発信していきたいです。
ムラオさんのtwitterはこちら!
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