今回インタビューを行なったのは「マンガ思考メソッド講座」を主宰する、オフィスしやすくの代表の寺田彩乃さん。
寺田さんの提唱する「マンガ思考」は、自分の人生を「一つの作品」と捉えて、マンガの「イメージ化」と「ストーリー化」の力を使って、自分の力で自分の人生を編集していく思考法のこと。
実は寺田さんは幼少期の頃から、家庭内の問題のこともあり、常に「生きづらさ」を抱えながら生きてきた、と語ります。
そんな寺田さんの救いであり人生の教科書だったのは、マンガでした。そこから寺田さん「マンガ思考」がはじまったそう。
“生きづらさ”の中に、人生の光をマンガに見出した寺田さん。
その言葉からは、マンガ愛と、”生きづらさ”を抱える人たちへの愛が溢れていました。
<Profile>
寺田彩乃
オフィスしやすく代表
デザイン事務所を経て、不動産や会員制リゾートにてIT戦略室でWebマーケティングを担当。その後マーケティングのコンサル会社で自社のマーケティングを経て独立。現在は複数業家として、デザインとマーケティングのコンサルティング、また、それらを教える講師として活躍。
2020年より、自身がメンタル疾患や家族の依存症による「生きにくさ」を克服した経験を元に開発した「マンガ思考」の講座をスタートさせる。
マンガは私にとって、まさに”人生の教科書”でした。
ー寺田さんは今、自分の感情をマンガのキャラクター化する「マンガ思考メソッド講座」を開かれています。マンガは寺田さんにとってどんな存在だったのでしょうか?
マンガは私にとって、まさに”人生の教科書”でした。マンガから本当にたくさん大切なことを学びましたね。最初は『美少女戦士セーラームーン』が好きになり、その後『りぼん』を買うようになって、『神風怪盗ジャンヌ』が大好きになりました。
ー寺田さんはご自身のHP上で幼少期から「生きづらさ」を抱えていた、と書かれていますよね。
当時は家庭内でいろいろと問題が起こっていて・・・。安心できる居場所が全くなかったんです。
夜、家にいることができなくて、家の近くの記念館の駐車場で1人で座って時間を潰したりとかしてました。
そんな状況の中でも、ジャンヌの主人公である日下部まろんちゃんと自分を照らし合わせて、本当の意味で自分も「強くあろう」と決意したんです。グレずに済んだのは、本当にマンガのおかげですね。
ー『神風怪盗ジャンヌ』のどんなところに「強くあろう」というメッセージを受け取ったのでしょうか?
主人公である日下部まろんちゃんは、強くて完璧な女の子、って見せ方をしているキャラなんですけど、実は”完璧”ってキャラをかぶっていることで、自分自身を守っている子なんですね。それで、最終回はまろんちゃんが弱い自分と向き合って、「ありのままの自分でいて大丈夫だよ」と自分で自分に言い聞かせて終わるんです。まろんちゃんが戦っている魔王も、人間の弱さや孤独感が魔王になったという設定で、一方的に魔王が悪者なんだ、っていう勧善懲悪的な倒し方じゃなくて。子どもながらに、邪悪や寂しさといった感情も人間の一部なんだ、それを見て見ぬ振りをしてはいけない、って思えたんです。
ーマンガの中のキャラクターから、色々な感情を学んで、人の気持ちを汲み取れるようになったということですね。
そうですね。「寂しい」とか「辛い」とか、そういった自分の弱い感情を受け止めて、認めることができました。マンガって、悪役でも悪役のキャラクターもきっちり描いていますよね。だから人の裏側のことも考えられるようになったんだと思います。
ー10代の頃の原初的な体験を経て、「マンガ思考」にたどり着いたきっかけを教えてください。
きっかけは中学生くらいの時ですね。無地のノートに、ひたすら自分のストレスやコンプレックスなどをキャラクターに投影したマンガを描いていたんです。当時書いていたマンガは男の子のキャラが4人くらいで男子寮で生活していて、それぞれに何かしらの問題を抱えていて、自分なりにその問題を解決していく、というストーリーでした。今思うと、全部私自身の問題をキャラに抱えさせて、マンガの中で解決していたんですよね。親との関係だったり、外見へのコンプレックスだったり。自分の内面を無意識に具現化して、それをマンガの中で解決することで自分が癒される。振り返ってみると、それが「マンガ思考」の始まりでしたね。
ーどんなところに癒しを感じていたのでしょうか?
誰にもわかってもらえない感情をキャラが一緒に感じてくれるところですかね。当時は友達も少なかったけど、マンガを描いている時は「ひとりじゃない」って思えました。マンガの中には、自分と同じような経験をして、同じような悩みや傷を持っている子達がたくさんいるので。
ー複数キャラを生み出すことで、心がしんどすぎないように自分の感情を分散させていたということですね。
そうですね。でも、高校生になったら、受験勉強などもあって、忙しすぎてマンガを描く余白の時間がなくなっちゃって。メンタル的にもしんどい時期でした。あんなに好きだったマンガやアニメから離れていて・・・。
でも、大学に入ってから、運命的な出会いがあったんです。
ー運命的な出会い?
たまたま観た「うたの☆プリンスさまっ♪」というアニメのキャラクター「聖川真斗さま」に一目惚れしたんです。それが運命の出会いでした。彼のことが好きすぎて、ずっと心の中で聖川昌斗さまと対話していました(笑)
でも、中学生の時から年齢が上がったおかげで、アニメキャラと自分が対話している状況を俯瞰で見ることができました。この行為が自分の中の様々な感情との”対話”なんだ、ってことに気がついたんです。自分の嫌なところも、ネガティブな感情も、キャラクターとして魅力的に扱えばいいじゃないか、って。そこから自分の中の感情をキャラクターとして捉える習慣ができました。
その後、プライベートや仕事で心理学について勉強する中で得た知識と、自分が行なっていた「感情のキャラクター化」が融合して、今の「マンガ思考」に近いものになっていきましたね。
ー「マンガ思考」をより実践的に身につけて、寺田さんの「生きづらさ」に変化したことはありますか?
まず、メンタルを自分でコントロールできるようになって、自分を好きになれたのはめちゃめちゃ大きいですね。自分をキャラ化することで、ありのままの自分を受け入れられるようになりました。嫌な感情も悪役化しちゃえばカッコいいじゃん、って(笑)ダークな自分もダークなままで受け入れられるようになりましたね。どんなに落ち込んでいても、どんなにしんどいことがあっても、常に冷静に自分を俯瞰する視点を持てている。だから、何かを怖がったり、躊躇することが少なくなって、どんどん新しいことにチャレンジできるようになりました。いわば演者も観客もすべて自分の『寺田彩乃劇場』が常に脳内で展開されている感じですね。
自分のことが嫌いだった時は、多分、人と自分とを比べすぎていたんだと思います。でも、「マンガ思考」のおかげで、自分の中の一人一人のキャラクターが自分の味方になって、応援してくれる。だから現実世界で誰に何を言われようと、平気になちゃいましたね。昔は人の目線をすごい気にしていました。他の人に何かちょっと言われただけで「あーあ。嫌われちゃったかも・・・」ってすごい心配になっていたんですけど、それが今では「まあ、嫌われたら嫌われたで仕方ないな」って思えるようになって、内面がすごく充実しましたね。
ー自分で自分の道を行く、というとこに振り切れたんですね。
そうですね。自分専用の応援団がたくさんいる状態なので無敵なんです(笑)
あとひとつ大事なことは、人のことも嫌いにならなくなったことですね。自分の中の嫌な部分を悪役化する。その見方を他の人にもできるようになって、いちいち人のことを嫌いにならなくなりました。苦手な人への距離の置き方もわかるようになりましたね。自分の思考を嫌いにならなくなったから、他人のことも嫌いにならなくなったんだと思います。人類全体を好きになりました(笑)
自分が生きてていいんだ、ってみんなが心から思える社会になれば、自然と「みんなが生きやすい世界」になっていくんじゃないかな、と。
ー寺田さんは「マンガ思考」をはじめからビジネスにしようと考えてはいたんですか?
考えていなかったですね。でも、ずっと自分と同じようにしんどい思いをしている人を助けたいなとは考えていました。
ある時、ゲームで人を夢中にさせるゲーミフィケーションとマーケティングを組み合わせた「ゲーム戦略」というノウハウの講座に参加する機会をいただいたんです。私、それにものすごい感動して。内容が緻密に組み立てられていて、とにかく分かりやすいし、面白いし、今まで受けてきた学校の「授業」とか「セミナー」と全然違ったんですよね。
講座を受けているうちに、自分の「生きづらさ」を解消してきた経験や知識も、こんな風に体系化すれば講座にして仕事にできるんじゃないか、と思うようになりました。
そこから、まずは行動が一番!の精神で、まずはモニターさんを募集してみました。
ー実際に「マンガ思考メソッド講座」を受けた方からはどんな反応がありましたか?
モニターさんの中に「結婚したいな」と漠然と思っている方がいらっしゃって。でも、彼女は頼りになる人じゃないと、とか、自分にない視点ビシッとアドバイスくれる人じゃないと、とか、かなりたくさん結婚相手に対する「条件」のようなものがあったんですね。
でも、マンガ思考を実践することで、自分の感情を客観視できるようになったら「私は家にいてくれて、安心できる場所を提供してくれる人がいいんだ」という本当の自分の気持ちに気がついたそうなんです。そのあと、知り合いの男性の1人とお互いの「結婚観」について話したことがきっかけで意気投合して、トントン拍子でご結婚されました。それは「安心できる人と結婚する」っていう自分の将来のビジョンがマンガ思考によって明確になったからなんですよね。自分自身の感情と向き合ったことで、今まで自分は結婚相手に多くの役割を求め過ぎていたことに気付いて、自分自身が本当に求めていることを選べるようになった結果ですね。
ー寺田さん「マンガ思考」によって社会にどんな影響を与えていきたいですか?
自分に合わないことを無理して行うことで起こる問題。例えば虐待やメンタル疾患、依存症などを社会から減らしていきたいですね。もっと本質的に答えると、私は母のような人を減らしたいんだと思います。母は自分との感情の向き合い方がわからなかった人で、アルコールに逃げてしまった。だから、そうなってしまう前に、自分自身の感情との向き合い方をみんなに知ってもらいたいな、と。
ー虐待や依存症などは今やオーソドックスな社会問題ですよね。
それらが起こる原因はつまり「自分の感情をコントロールできない」状態なんです。その原因としてはまず、認知の歪みが一番大きい。感情は、認知を通して見た後の”結果”です。その認知が根本から歪んでいると、感情が暴走してしまうんです。なので、まずは感情と向き合って自分の認知の歪みを認識するのが重要なんです。
ー似たような例だと「認知行動療法」とかがありますよね?
そうですね。自分の認知を客観的に見て修正していくという点では、マンガ思考は「認知行動療法」と同じようなものと考えてもらっていいんですが、私はそれをエンタメ化していきたいんです。マンガ思考の講座に来たら、楽しみながらワークをする中で、自然とメンタルケアができて、どんどん自分を好きになっていける、というのが理想だと考えているんです。なぜかというと、人は楽しかったり、面白いと思えることでないと興味を持ち続けられないからです。自分の内面と向き合い続けるというのは、なかなか骨の折れる作業です。だからこそ、それをいかに面白くできるかにこだわりたいですね。
自分は誰からも愛されないというセルフイメージが根っこから歪んでしまっていると、どんなに優しい言葉をかけられても、素直に受け取れないし、叱られた時にも愛されていないから攻撃されているんだ、と間違って認識してしまう。それがマイナスの感情になると悪循環になっちゃいますよね。自分が生きてていいんだ、ってみんなが心から思える社会になれば、自然と「みんなが生きやすい世界」になっていくんじゃないかな、と。
ー寺田さんは具体的にどんな方に「マンガ思考メソッド講座」を受けてほしいですか?
感情に振り回される人生を終わりにしたい人、ですね。やっぱり、自分の感情をコントロールできないことが、生きづらさに繋がっていると思うので、感情を味方につけて、感情を自分の敵にしない方法を「マンガ思考」によって身につけてほしいです。
そして、講座を通して、「自分の問題は自分1人だけのものではないのだ」ということに気付いて欲しいと思っています。自分の苦しさとか生きづらさとかを、「なんで自分ばっかり」とか「なんで自分が幸せになれないんだ」とか悲観的捉えるのではなくて、今、自分が抱えている問題は、自分がこの世の中を良くするために代表して背負っているんだ、と考えて、自分と同じようなことで悩んでいる人を助ける側に回ってみる。つまり、被害者になるんじゃなくて、”ヒーロー”になろう、ということを伝えたいんです。
ーまさに自分の人生というストーリーを描いたマンガの主人公(ヒーロー)になろう、ということですね。
その通りです!自分の人生を生きないと、生きづらさを他人のせいにしちゃいますよね。自分で自分の人生を生きて、自分らしくいられたら、自然と人にも感謝できるようになる。他人を人生の主軸にするんじゃなくて、自分を人生の主人公にして、まずは自分のことを大事にして欲しい。
あくまで人生の主人公は、自分なんですから。
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